小学校高学年の頃、担任の女性教師が入院のため長く休職していましたが、ある秋の日に亡くなったと聞かされました。一年前に転校して来たばかりで心細かった私に優しく接してくれた方でした。
2学期の途中から急遽私たちのクラスの担任になったのは、新人の女性教師でした。今思えばその教師も精一杯の毎日だったのでしょうけれど、幼かった私たちはまだ前任の教師の死を受け入れることが出来ていませんでした。思い通りにならない私たち生徒に業を煮やした新人教師は、当たり散らすように亡くなった教師が作って残した教室の掃除当番表を破いて捨てました。皆の前だったのに。
いくつか他の要素も積み重なり、私は授業をボイコットするようになりました。理路整然と新人教師にしてはいけないことをしたのでは?と言えればよかったのですが、駄々をこねる子供同然に困らせるようなことばかりをしていました。
小太りの男性教師から職員室に呼ばれ、私は雷のように怒られると思っていました。しかし、その男性教師はこう言ったのです。「どうしたんだ?」。
男性教師は私の気持ちも察していたのでしょうけれど、まずは私への信頼を提示してくれました。「おまえが教室を抜け出したり、授業の邪魔をするなんて、どんな想いがあるのか話してみろ」というその問いかけに、私は救われました。結局、破かれた掃除当番表や他の話も一切しませんでしたが、男性教師との「もうやらない」という約束は守りました。信頼に応えようと思ったのです。
アメリカから見たトヨタ自動車は、今や信頼が揺らいでいます。2月24日に米ワシントンで米議会下院の監視・政府改革委員会により開かれる公聴会へ豊田章男社長の出席が確定する以前、豊田社長が「現地法人トップが対応する」と会見した17日時点では、英紙ファイナンシャル・タイムズは「アメリカでは怒りが沸き起こった」と一面で報じたほど批判的でした。安全のために誠心誠意尽くしてきたと、信頼を取り戻すには時間がかかるかも知れません。
「100年で築いた信頼も失うときは1秒だよ」とは高校時代の担任教師が教えてくれた言葉でしたが(若い頃は叱られることを繰り返してしまいます)、その場しのぎのごまかしでは未来の成功を手にすることはできませんので、非があるならそれを認めて、前進して欲しいですね。
トヨタに限らず、社会においては信頼が大切です。マニフェストを遵守できなければ政治も信頼を失いますし、お客様との約束を守らなければ企業は仕事を失くします。信頼を1秒で失うことになる前に、今一度衿を正さなくては、と思います。もう学生ではありませんから、「どうしたんだ?」とは言ってもらえませんよね。
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話を戻してしまいますが、冒頭の新人教師に私は口だけの謝罪しかしませんでした。最近で言えば冬季オリンピック日本代表選手の「反省してま〜す」のように。しかし、今となってはちゃんと事情を説明して、「授業を邪魔してしまいすみませんでした」と謝りたい気持ちです。きっと、お互い年を重ねて理解し合えると思うのです。
さて、年を重ねると言えば、ザ・ビートルズではポール・マッカートニーが書いた「ホエン・アイム・シックスティー・フォー(When I'm Sixty-Four)」という曲があります。ポールが10代の頃に書いた曲にミドル部分を書き足して、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で復活させました。恋人に「64歳になっても僕を必要としてくれるかい?」と歌う内容ですが、2006年、ちょうどポールが64才になる直前に当時の再婚相手との離婚が発表され皮肉なエピソードとなってしまいました。
しかし、ポールの子供たちが集まってこの曲を録音し、誕生日プレゼントにしたそうで、ポールにとっては大切な一曲になったのではないでしょうか。
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